肥薩線ループスイッチバックと駅舎群

人吉から伊佐市へ至る国道267号から小道へ入り、中央線のない曲りくねった細い道を南へ進む。対向車に注意しながら進む。登り坂とカーブが連続する道だ。30分ほど道と格闘した頃、JR矢岳駅を遠目に捉える。

【矢岳駅】



山々に囲まれ貴重な平ら場には水田や畑が耕され、木造の駅舎は静かに佇む。明治から時間は動いていない錯角を覚える。標高は500mを超えているようだ。
駅敷地内には蒸気機関車が展示されている。D51170と刻まれた緑色のプレートが目を引く。雨が打ち込まない状態で保存されている。SL人吉の620型蒸気機関車58654号は、かつてこの場所で静態保存されていた。



矢岳駅へ折れた場所から少し南へ進むと宮崎県だ。すぐさま踏み切りで、右手先にはトンネルが見える。矢岳トンネルだ。1908年に竣工した。難工事だったらしい。トンネルの上部には「天険若夷」と刻まれている。



来た道を戻り大畑駅を目指す。広い道あり細い道ありを進むと駅舎が見えてくる。周りは木々に囲まれ人家は見当たらない。待合室に入ると壁という壁に名刺などが貼られている。駅舎自体は木造だ。駅舎の一部では地元の方らしき人々が市を出している。駅舎の隣には石で組まれた円形の構造物がある。給水塔として使われていたようだ。

【大畑駅】




大畑駅は、ループする線路の途中に設けられたスイッチバックの折り返し線上にある。線路の配置を眺めていると列車の動きを想像できる。奥の線路は右方向が矢岳駅方面で、手前の線路は左方向が人吉駅方面だ。その間にあるのがスイッチバックするための線路だ。
大畑駅は290mほどの標高だから、人吉駅からは180m弱ほど登り、矢岳駅とは200mほどの標高差がある。列車が急峻な峠を上り下りするため、スイッチバックの施設が設けられているようだ。100年前の人々の創造力と技術力に脱帽するばかり。



矢岳駅から矢岳トンネルを抜け南へたどると真幸駅だ。駅舎はスイッチバックの折り返し線上にある。真幸駅は宮崎県えびの市に属し、国道447号で行く場合はかなり上っていくことになる。駅周辺は北に山が迫り草木が茂る。近辺に人家は見当たらない。駅舎は木造で100年以上の年月が経過している。大切に守られていることがうかがわれる。ホームには幸せの鐘があり、観光客の姿が見られる。

【真幸駅】


嘉例川駅は1903年に建てられた木造駅舎だ。明治、大正、昭和、平成を生き抜いてきた駅舎で、100年を過ぎた現在も現役である。国の登録有形文化財に指定されている。駐車場は駅前にあるが、近くにも整備されている。観光客は多い。日曜日の午前、限定の駅弁が販売される。訪れた日は、駅弁のほかかき揚げなども売られていた。

【嘉例川駅】


肥薩線に生きるこれら木造の駅舎は、地域の人々や関係者の努力により時代を越えて守られてきたのだろう。拝見させていただけることに感謝。


肥薩線ループスイッチバックと駅舎群
大畑駅 熊本県人吉市大野町
矢岳駅 熊本県人吉市矢岳町
真幸駅 宮崎県えびの市大字内堅
嘉例川駅 鹿児島県霧島市隼人町嘉例川 国指定有形登録文化財
駅舎見学無料
現役駅舎
撮影:2014/10/4(真幸駅2008/10/12 嘉例川駅2013/7/7)